老いらくの恋
脳梗塞で半身不随とはいえ、杖無しで生活をしている独身のAさん(70歳後半 男性)
退院後の生活立て直し支援からのお付き合いで早2年
毎月訪問し生活改善のアドバイスや通院同行、ケアスタッフとの連携など家族代わりとしての立ち位置での活動である
体調も安定し、週に3日ほどリハビリのためにディサービスに通う
ディサービスだから そこでお風呂も入れるが、なんだかんだ理由をつけて頑なに入ろうとしない
どんなに、ケアマネージャーや私、ディサービスのスタッフが勧めても入らない
片手が使えない不自由な体で、自宅でシャワー浴だ 転んだらと思うと心配だ
そして、ある時バスに乗って床屋でいきなり白髪染めをしてきた
白髪も悪くないのにね‥‥
少々、つっこんでみた
「ディサービスでお風呂入らないのは、スタッフに見られたくないから~笑笑?
白髪染めなんていきなりどうしたの?気に入っている人でもいるの?色気づいた~?笑」
「そんなんじゃないよ~~~笑」
という笑い話をしてたのが半年ほど前
通っているディサービスから電話が来た
「伴さん この頃ディサービスで怒りっぽいんです。急に怒りだすようになりました。
たぶんですが、お気に入りのスタッフが構ってくれないからみたいなんです。ずっと目で追ってます。
色気づいた話は冗談ではなかったようです!!」
「誰に?利用者さん? えっ!スタッフ?何歳の方?40歳代後半? マジで!!!!」
大層驚いた私であったが、「私でないんかい!!笑」 まっ、それも困るが
好かれたスタッフは困っているようである
他の方と仲良く談笑していると怒りだすまでになってきた模様だ
そうなってくると、恐怖となる
逆にそっけなくしたことで、逆恨みされやすい危険性も出てくる
脳の中にある前頭葉が退化し始めた高齢者は、我慢する力や感情をコントロールする力が弱くなるからより本能に忠実になるようだ
若い時なら我慢できたことが、抑えられず感情を爆発させてしまうから厄介だが
感情に素直になる 飾りのない素の人間の姿といえば綺麗だ
他の方の話だが、90歳男性で歩くのもやっとのBさんは、若い頃は飲み歩き「モテモテだった」が自慢だ
ある日一緒にタクシー乗って移動していたところ、おもむろに手を握ろうとされた時があった とっさに振り払った
別の日にご自宅に行った際に、帰ろうと立ちあがった時にも手が伸びてきたので、思いっきり振り払った
あとからケアマネージャーには怒っていたらしい「伴さんは振り払った」
飲み屋のホステスではあるまいし手を握ればなびいてくれるとでも思っているのか その手には乗りません
そんな話は、いろいろなところで聞く
介護医療業界は、身体接触が必要な仕事だからか、生生しいエピソードは沢山ある
そうえば他の方の入院中に、若い女性の病院看護師からクレームがあった 「セクハラ行為を注意してほしい」 (;´д`)トホホ
ディサービスや入所施設でも
お気に入りのスタッフに手を引かれないと移動したくないと駄々をこねるなんて日常茶飯事だそうだ
保育園児なら「もう仕方ないわね~」で済むんでしょうが
いくつになってもどんな状態でも異性に仕掛ける行為は動物の本能なのか
本性露わになった人間の姿は、ある意味清清しく羨ましい
この秋自宅内の物を断捨離しまくろうと、エンジンが入った
仕事柄色々な方のお宅の家財処分に立ち会ってきている
これでもかというほど本当にいろいろなもの蓄えられている どのお宅も大概大量に物が溢れている
そして最後は、何のためらいもなく引き出しを荒らされガツガツ回収されていく光景を見て 明日は我が身と思い立った
自分の手で断捨離しておきたい そんな気持ちになった
前頭葉が退化し、体力も落ちてくると、断捨離よりも溜め込みに走るかもしれない 私はどんな高齢者になるのだろう
本能より理屈で考えまだ判断できる今だから、先延ばしは禁物と
高齢の皆様方の生きざまを見ながら自分の生きざまを考える今日この頃だ